女優デビュー
悟君と話していた奏真君がふと目を上げた。

私と学さんを見つけたようで、目が合うと微笑んでロケバスに乗り込んできた。


「二人で何してんの?
俺もいーれーて!」

私は笑って答えた。

「何って、ただ出番待ちしてるだけですよ。
外は暑いですって、そんな話してただけです」


奏真君とはたまにメールをするようになっていた。

でも、それだけ。

それでも、現場で会えば必ず何かしら話しかけてくれて、私はいつもそれに励まされていた。


奏真君は私の返事を受けて、学さんに言った。

「たしかに今夜は暑いですよ、学さん。
湿度めちゃくちゃ高いんじゃないかな。
あとで、走るシーン撮るみたいだけど、この暑さで走ったらすぐ汗びっしょりでしょうね」

「まじ?俺、パス~」

「いやいや、ダメですって。
学さんだけ免除とかありえないですから!」

「えー、奏真代わりに走っといてよ」

「いやいや、無理ですから!」


二人のそんなやりとりにくすくす笑っていると、スタッフさんが呼びに来た。

準備ができたらしい。

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