AEVE ENDING
「雲雀様が、橘倫子を選べるように、「弟君」をつくり変えたのです…」
倫子に、雲雀の子は望めない。
同じ血が通う二人は、けれど母として父としては、機能しないから。
「真鶸に雲雀様の細胞を埋め込み、実質、雲雀さまの血縁者とする―――。真鶸がいつか誰かと身を結んだ時、やはり彼の血は子へと受け継がれ、それを繰り返してゆく。そうすれば再び、雲雀さまのような神の素質を持つ者が産まれるから」
だからこそ。
だからこそ、桐生は雲雀に望んだのだ。
「母」の救済を。
『―――もう二度と、お前のような生き物が産まれないように』
だから、世界を。
壊す必要のない、美しい世界を。
「…それがなんだって言うの。桐生が完全な悪じゃなくたって、倫子と真鶸くんの犠牲がなくなるわけじゃないわ」
ササリが鼻息荒く双子を睨みつけた。
死者に対する憤りは留まることを知らず、膨らむばかり。
倫子の苦しみを、痛みを、抱く必要のなかった憎しみを、知っているから。
「落ち着いて、ササリ。今更そんなこと言ったって仕方ないよ。過去は変えられない」
過ぎてしまった苦しみは元には戻らない。
抉られた傷は痕となり残る。
どうせやり直せないのなら、不満も不平も口にしないのが得策だ。
―――それに。
「倫子なら大丈夫だぁよ。なにせあの雲雀くんがついてるからね」
煌めいた世界は確かに生きている。
我々は、では、なにをすべきか。
スタート地点に立つ我々は、神にその術を与えられているのだから。
(足掻くなら、まだ足りない)