AEVE ENDING






かさかさと枯れた落ち葉が風に鳴る。

多くはない通行人が通り過ぎるていくのを気配だけで感じながら、倫子は雲雀を真正面から見つめた。


意識の全て、想いの全て。

ひとつも溢れ落ちることなく、伝わるように。






―――ザッ…。





風が強く吹く。

風に流された葉の群れが足首を過ぎていくのを感じて、倫子は目を閉じた。


「…いや」

それはざわりと耳を埋めた風音を縫って、はっきりと届く。



―――『嫌』。

その意味を理解して、心臓がズキリと痛む。

独りを思い知る、凍り付くような、細く無数の痛み。



「……ケチ」

それでもそれを押し隠して、無様に拗ねた振りをして。

(もっと笑って、負い目すら抱かせないように、わかったと言えたらいいのに)

それができない自分が、やっぱり情けない。



「…僕はね、」

俯いた視線に、かさかさと囁き合う落ち葉と、よく磨かれた革靴の先。

手を伸ばせば触れられる距離まで歩いてきてくれたことで、その声がもっと鮮明になる。


(愛しい)

たった、それだけで。




「情に流されて、他人に合わせたりして、自分の未来を決めたくはない」

けれどそんな人に「他人」呼ばわりされるのは随分と辛い。
再びズクリと軋む胸の中心が、震えた。

笑顔すら保てなくなりそうで、自然と唇を噛み締めていた。

雲雀の視線が、肉を通りすぎ心臓に突き刺さる。



「…君に付き合って、君と一緒にいるんじゃないよ」


―――え。

その言葉、に。



「僕は僕の意思で、君といる」

胸が打ち震えるのは、どちらにしても痛みを伴うのだと。

その幻のような姿が間近まで近付いて、互いの指が、じわりと交わる。

体の脇にだらりと垂らしたままの手を握られて、その滑らかな頬を覆うように誘導された。
風に曝されてひやりと冷えた頬を、重ねた手が包む。

そこで初めて、その手が自分のものより大きく、厚いことを知った。






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