AEVE ENDING






「かみさま…」

「かみさま…」

「どうして」

「かみさま…」


譫言のように繰り返す姉弟は、異常だった。
その焦点の合わない視線の行き先を、倫子は思わず、見遣る。

そこには濡れ羽の髪を潮風に揺らす、きれいな男。
その顔に表情はない。

だけど。



―――心配、してしまう。

このような崇拝のされ方は、余りにも。



「…僕は」

倫子の腕から不意に視線を上げ、雲雀は虚ろなオッドアイを見返した。

「神様…」

身体的なダメージはゼロだというのに、彼らは精神を喰い尽くされたかのように見える。
憔悴しきった二人の顔はまるで、一握の希望に縋るように。


(…あんたはこんな眼を向けられて、平気なの)

雲雀の横顔は歪みもなく、ただ柔らかに美しい。

まるで彼らの罪を赦す、神様みたいに。



「僕は、君達のいう神様じゃないよ」

艶やかな笑みを讃えたまま、雲雀は手を振り上げた。


「…目障り」

言い捨て、振り上げた手で、促す。

「、…神様」

二人は名残惜しげにそう呟いたが、きゅ、と唇を噛み締めた。

そんな彼らはもう、雲雀の眼中にない。
それを悟ったのか、白い法衣は律儀にも一礼して姿を消した。

重い絶望の空に千切れて、憐れな白衣は音もなく熔けていく。

まるで今からが、虚構の始まりだと言わんばかりに―――。














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