AEVE ENDING





「…うっげ」

ミスレイダーの隣りに、あの嫌味たらしい東部の教師、梶本も立っている。
あの陰湿な性格を思い出し、倫子は唇を歪めた。

(…あの傲慢チキな鼻が、いやだ)

警備員となにやら話をしていた雲雀が倫子を振り向く。

「なに不細工な顔してるの。行くよ。……増してるったら」

雲雀の言葉が理解出来ず、倫子の眉間には更に皺が寄る。
意味わかんねぇよ。

「なにが増してるって?」

なので素直に問えば。

「不細工度が」

青筋がぶちりと音を立てた。

(…死ね、性悪め)


「中身も醜いなんて救いようがない」

そしてまたも脳内を読まれた。
このじりじりとした違和感に、最近は慣れてしまっている。
しかしだからと言って、慣れないこともあるもので。

ぶさいく。



「うるっせえ!お前マジいっぺん地獄に落ちろよ!地獄に落ちてもやってけそうだけどな!」
「言ってることが滅茶苦茶」
「うっせ馬鹿」
「生意気」
「、いった」

いつもの応酬のあと、頭に一発、重いのを喰らった。

(…この理不尽な暴力にも慣れてきちゃってんのが、なんていうかどうしようもねぇな、私)

たんこぶが出来た頭部を撫で擦り、倫子は色々なものを諦めることにした。
足掻いても勝てないなら、多少のことは受け流さなければ。


「行くよ」

ギ、ィィ…。

殴られた頭をさすりながらマゾ疑惑に悩む倫子を促す雲雀の声と共に、重苦しい音を立ててゲートが開いた。


―――腐臭がする。

排泄物や食べ物の、腐った臭い。

(…人の臭いだ)

見渡せば、表情の暗い人間が地べたに直に寝転がり生活していた。

簡易に造られたトタン屋根の下で、蠅にたかられながら眠る老人、足が痩せ細り筋肉すらなくし歩けずにいる子供、地面を這う蟻を毟るように食べている肋の浮き出た青年。




< 272 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop