AEVE ENDING
『愛した、証拠』
そう言った。
奥田が振り向く。
私は、笑う。
確か全身の抜糸が済んで、三日経った頃だった。
体中まるでフランケンシュタインのようで、やっぱり笑った。
『ヒバリ…が、お母さんに愛された、証』
抜糸の痕を指先で辿る。
痕は残ると言われた。
奥田は心も込めずに謝ってきた。
女の体なのに、わりぃね、って。
笑うしかない。
『お前、ほんとお人好しな』
奥田が私の身体に薬を塗りながら言った。
見当違いな意見に苦笑する。
『そうでもない。言い聞かせてるんだよ。毎日毎日、ずっと』
この手が人の殺め方を知った今、この湧き上がる殺意を押さえつけるために。
いつかそれを事実にするために。
『殺したい…?』
奥田が私を見上げる。
その眼はやはり無感情で無色で、なにを考えているのか、知れなかったけれど。
『ヒバリを、その母親を』
―――殺したい?
『殺したい、よ…』
きっと、憎らしいのは確かなのだ。
(…でも)
もう、解らなくなった。
───だってヒバリが。
(解らない…)
雲雀が、笑う、から。