AEVE ENDING






「さっきも言ったでしょう。采配の結果が信じられなくて、確認のために何度も繰り返してるんです」

それを聞いた梶本は、めげずに倫子を一瞥してまたも鼻で嗤う。

「なにを仰います。何度も繰り返したという事は、結果は全て同じだったのでしょう」

さも倫子の采配などどうでも良いと言いたげである。
そんなクソ教師の言葉に、奥田が小さく笑ったのを倫子は見逃さなかった。

そして、決定打。


「自信をお持ちになられたらいい。貴方は優秀な精神系アダムじゃありませんか」

その言葉を引き金に、謙虚に近い表情を浮かべていた奥田の顔が一変した。

「でっすよねぇー!この俺が間違いなんか起こすわけありませんもんねぇー!な!ミチコォ」

何故私に振る、とは思いつつ、倫子も素直に頷いておく。
急変した奥田の様子を怪しみながらも、態度の悪い梶本は更に追い討ちを掛ける。

奥田がそれを狙っているのだとは、露とも思わず。

「そうですよ。直感力第一人者の貴方の言葉に、誰も文句は言いますまい」

その言葉はまさしく、奥田が求めていたものだったのだろう。
そうとは気付かず、梶本は爽やかな笑みを浮かべている。

(馬鹿なやつ…)

心中で毒づいた倫子に、奥田はにやりと視線を移してきた。
そして気持ち悪いウィンクをして見せると、ホールに残っている生徒達に向き合う。


「それじゃ、今から橘倫子のパートナーを発表しまーす」

ちゃらけた声とは裏腹に、至極まじめな顔をする。
嫌な予感をひしひしと感じつつ、倫子はじっとりと濡れた手を握り締た。

その背後では。


「うわ!緊張の瞬間!」
「イヴとペアとか、死んだ方がマシだわ」
「イヴ病が感染して力が使えなくなったらどうする?」
「自殺ものだよな」


(自殺する前に私が殺してやるから安心しな、クソ野郎共)

一様に囁かれる陰口に顔をしかめつつも、ただ黙って奥田の言葉を待った。

―――緊張する。
高校受験なんぞしたことはないが、もし結果発表を待つとしたらこんな気分だろうか。

心臓は容赦なくドクドクと早鐘を打っていた。

奥田は未だ勿体ぶって、口を開こうとはしない。

はやく言え。




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