AEVE ENDING






「当事者がなに言ってるのよ。あんたが倫子と修羅を引き合わせなきゃ、こんなことにはならなかったかもしれない」

それは責めではない。

―――責めではなくて。



「変えたかったのは、私も同じだわ…」

その名は、後悔。
なんの役にも立たない、自己満足の象徴。

「けれど、そっとしておいてあげたかった。あの子はもう充分に、痛みを味わったのに」

あの慟哭は、今でも忘れない。
当時、まだ新米だった一研究員であったササリが見た、壮絶な悲しみと憎しみと、叫び。

あんな小さな体で、ボロボロになって、立ち上がることすら、出来ないくせに。


「あの子はもう、」

絶望に、身を浸していたのだ。
そこから這い上がることはできない。

あとはもう、ただ墜ちてゆくだけだというのに。



「…教えたかったんだよ」

ササリの懺悔にも似た小さな声を、遮るように。

教えたかったんだ。
きっと本当は、らしくなく。

「…安らぎというものを」

あの傷付いた憐れな獣に、例え仮初めでも、安寧を。


(安らぎを与えて、そして)

なにが残るか、見てみたかった。


(暗い水底で肩を抱いて独りで脅える、耐えるような、その痛々しさ)






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