AEVE ENDING
「まだ終わってない。僕のために餌を用意してくれているみたいだから」
なんでもないことのように、雲雀は言う。
「…けれど君まで敵の手に落ちれば、それこそ」
此の世の末は―――。
「倫子ひとりの犠牲で終わるならそれは安いもんだろう。偽物を手にした組織に、一時の栄光はあれど長続きはしない」
倫子ひとりの犠牲で、世界の平穏が保たれるなら、それは。
忌々しげに眉を寄せる奥田に。
「───ねぇ、」
静かな声が木霊した。
悲しみに打ちひしがれるばかりの愚者を裁く、天の声。
「ひとつ、勘違いしてるみたいだから言っておくけど」
顔を上げた奥田の眼に、慇懃とも呼べるほど静かな無表情が飛び込んできた。
歪むことを知らない、その眼が。
「僕は正義の使者じゃない。世界がどうなろうが知ったことじゃないし、寧ろ人類の傲りが蔓延するこの世界を掃除してくれるなら、闇組織でさえ大歓迎だよ」
―――ならば、何故。
「僕が気に入らないのは、僕に刃向かう愚か者がいるってことだけ」
(そしてあれは、僕が殺すものだから)
「……ハッ、」
慇懃な笑みはまるで悪役だ、と奥田はクリアになった思考で考えた。
目の前に立つ神の支配欲と傲慢さが心地良い強みとなって、くたびれた身体に染み渡ってゆく。
「…あの生意気な原形を残さないくらいには、いたぶってあげなきゃ」
無意識に呟かれたそれはあまりにも残酷ではあったが、これが本来の姿なのだと、物言わぬ修羅は語る。