AEVE ENDING





しかしその数年後、新たなるスタートを切った世界は、ひとりの老人の出現に大きく揺れることになる。




───幾田慶造。

人類初の遺伝子疾患者、「アダム」として世界中を震撼させた人物である。

人類にとって絵空事でしかなかった彼の能力は、生物兵器による人体破壊の結果とも、或いは人類の更なる進化の姿だとも、神が起こした奇跡だとも呼ばれた。

そうして彼の一族は、かの発見から世界の軸に深く喰い込むようになる。

幾田一族は衰退した世界連盟の重役の馴染み顔となり、やがて世界各国で確実に人口を増やすアダムを管理すべく箱舟連盟を設立。

アダムとして覚醒した者を収容し、力のコントロールを教え、国に従事する特殊職に就かせることにより、その尋常ならぬ能力を以て先の大戦にて汚染された土地を浄化し清掃し、元来の麗しき星を目指す。

それを目的とした箱舟機関の設立は、生き残った人類の希望となった。

国中に水路を作り、汚染された水質を浄化する施設を各地に点在させ、貧しい人々の生活をよりよいものに―――しかしこれは、上流階級にのみに通用するものである。

そうして着実に実績を上げる箱舟連盟にて、その地位は世界的先進国でも高まり、今や世界機関のひとつとなりつつあった。







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