AEVE ENDING




「…パートナーに殺されかけたなんて、きっとアダム史上、私が初めてだ…」

痛む身体を抱えながら、やっと部屋の前へと辿り着いた。

うぇっぷ。
吐き気を催しながらも、なんとか部屋のキーを鍵穴へと差し込む。
それに続く雲雀は、さも愉快そうな表情で倫子を見ていた。

「見るな、不愉快だ」
「僕はとても愉快だよ」

絶望と微笑。
ふざけてやがる。

「…私はあんたの視線がとても不快だよ。今すぐトイレに駆け込んで吐けそうなくらい!」

ぐったりと壁に寄りかかりながら、倫子は雲雀を睨み付けた。
先程のアンフェア過ぎる暴力に相当な体力を使った。
覇気の屍を残す眼は塵を被ったかのように澱んでいる。

「行ってきたらいい。内臓を圧迫して吐くのを手伝ってあげるから」
「…もういい加減、黙れよ」

無理だ。
こんな男と共同生活なんて無謀過ぎる。
酸素ボンベもなしに海で生活しようと試みるくらい、無謀で危険。

(あとで奥田に抗議に行こう)

これはもう、頭を下げるしかない。
しかしそう意を決した倫子の目に、次の瞬間、とんでもないものが目に入ってきた。

この西部箱舟において、有り得ない光景―――。



「はぁ?」

目前に広がるのは、高貴な白で統一された、だだっ広い空間だった。
扉を開けてすぐ目に入るのは、絶景百八十度を眺めることができる床から天井まで伸びる巨大なガラス窓。

そのガラス張りの向こうには、デコルテが美しいバルコニー。洗濯物を干せば立つ位置もなくなる狭いベランダじゃなく、広々としたバルコニー。そこから眺める海は土色に汚染されているが 、遮蔽物の機械的なシルエットを映し出している水平線は、なかなかのオツである。

「…はああ?」

そして着目すべきはそこだけじゃない。

よく磨かれた大理石の床、壁のオフホワイトでの切り替えが、高い天井を更に高く見せている。
置かれた家具は、備え付けや間に合わせとは思えないようなものばかり。
湾曲した室内の、一番奥に設置されたベッドは、クイーンかダブルか。シーツも枕も、ところどころに置かれたソファやテーブルも、くすんだアンティーク調の白で統一され、潔癖過ぎて気持ち悪いくらいだ。
パリパリにメイキングされたそれらは、明らかに。


―――相応しくない。

十代かそこらのガキに、宛がうような部屋じゃない。



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