AEVE ENDING






「生きている価値など、ないでしょう」


そうだね。

そのとおりだ。




「倫子、さん…」

真鶸が泣きながらこちらに駆けていた。
けれどすぐ、不特定多数の生徒達に危険だと阻まれる。


(…まるで、処刑だな)

神に逆らう罪人を裁く、断罪の刻。


(真鶸、ごめんね)

もう遅いんだ、なにもかも。

―――なにもかも、遅い。




「…ぜんぶ、遅かったんだよ」

振り上げられた男の手は私の横面を狙う。

念力の込められ方が尋常じゃない。
喰らえば一撃で首が吹き飛ぶだろう。


「みちこさ、」

それを察した真鶸が更にもがく。

視界の端に、アミも映った。
ミチコ、と、私の名を叫びながら、私を救おうと、きれいな手を、伸ばしてくれる。


「…遅かったんだ、奥田」

あんたが雲雀に巡り会わせた意図には、とうの昔に気付いていたけど。


「今更、だったんだよ」

雲雀に会ったところで、憎しみを融かされたところで、憎んでいた相手に、恋焦がれたところで。



「私が醜いのは、変わらないから」


変わらない。

なにも、変わらないんだ。

罪人が罪を忘れようと、犯された罪自体が失くなってしまうわけではない。

神が罪を赦そうと、罪に汚れた罪人が潔白になるわけではない。



「汚いまま、変わらない…」

ロビンやニーロに庇われている純白のマリアと目が合った。
こちらを見つめる視線には、脅えと慈悲深さと、そして贖罪を問う、清廉さが。




「…私は、オマエにはなれないから」


―――だから。






「…死になさい、」

神を崇拝する裁きの手が振り下ろされる。

アナセスの制止も、真鶸の悲鳴も、気狂いの信仰者の耳には届かない。


―――あの人の前で本当の罪人になる前に。






「雲雀、」







ゆ る し て。











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