AEVE ENDING
「な、に、言ってんだ、いきなり」
思わずどもってしまいながらも問い詰める。
よもやあの雲雀からそんな台詞が―――というか、夢ですら有り得ないと思っていたのに。
隣でそれをバッチリ聞いていた真鶸も驚いたように瞼を瞬かせている。
「別に。…ただなんとなく、思っただけ」
そうして視線を逸らした雲雀がますます気味が悪い。
らしくなさすぎて気持ち悪いくらいだ。
コレ本当に雲雀か?嘘だろ?
「兄様は、先に産まれるとしたら、男の子と女の子、どちらがいいですかっ」
しかしびっくりしたままの倫子を差し置き、真っ先に回復した真鶸が会話に飛び乗る。
(やめてくれ)
まさかの雲雀の子供欲しい発言にはしゃいでいるらしい。
普段より気安さを感じさせる真鶸に、雲雀も向き直った。
「……どっちでもいいけど、どうせならどっちも欲しいよね」
オイオイ、お前今までそんなこと考えたことなかったろ、絶対。
そう思わずにはいられない程の反応の遅さで雲雀が答える。
真鶸は嬉しげに笑って、それに賛同の意を示した。
そこから無駄に展開する真鶸の我が子理論。
雲雀も満更ではない様子でその話を聞いている。
呼ばせるならパパか父さんどちらか、から始まり、最初に覚える言葉はママパパちゅきちゅき云々、娘が恋人を挨拶に寄越したらどうしよう云々。
(疎外感…)
ぽつり。
無駄にそんな効果音が似合うこの空気が虚しい。
仕方ない。
倫子は倫子で猫まんまを食べようと箸を握った――――。
「兄様と倫子さんのこどもだったら、絶対に可愛いですね!」
そして真鶸のそんな無邪気な一言に、倫子は再び吹き出したのだった。
無駄にデジャヴ。
こんな演出は微塵も必要ない。
「汚い」
さすがに二度目は殴られた。
真鶸は真鶸で「倫子さんはとっても愉快なママになりますね」と笑っている。
(なんなんだお前ら、)
そうしてひたすらまだ見ぬ我が子話に花を咲かせている兄弟をよそに、やはり倫子は話題に入るに入れずにいたわけだが…。
授業が始まってしまえばそんな穏やかな会話を続行するのも叶わなくなった。
何故ならば、今日は―――。