AEVE ENDING






「雲雀…?」

橘が訝しむようにこちらを見ている。
ずれ落ちた腰を抱え直しながら、その首筋に額を押し付けた。



『たすけて…』

遥か彼方に生きていただろう「初代」は、今、腕に抱く彼女と歳の変わらぬ若い娘だったという。

憐れな、憐れな、娘だった。

施設に連れてこられた試験体の、唯一生き残った最後のひとりだった。



『神の真似事など、すまい』

優秀な、優秀過ぎる故に政府から隔離されていた科学者や医者達の、独自の集まり。


『神を超えるのだ、我々が、我々のために、神を』


罪深い研究。

人体実験。



『廃退した世界を終わらせなくては―――。だからこそ、我々自らの手で、時限爆弾を』
『身ひとつで集団殺戮が可能な、人類をモデルにした兵器実験を』

言い様は様々だった。

なにが正しくてなにが過ちだったかなど、判断がつかぬほど、彼らは既に狂っていたのだ。

その狂人らの間で、幼さの残る娘がどれほどの恐怖を味わったであろうか。



『ぅ、あ、…あ ぁあ ぁ あぁ あ…っ』


耳に残る橘の悲鳴が、重なる。

皮膚を剥がれ肉を裂かれ内臓をいじられ血液を奪われ、自由を、温もりを、尊厳もすべて奪われて、肉体は既にヒトからかけ離れていた。

毎日のように嘔吐し、吐血し、強力な薬物を水のように飲まされ、脆い体は朽ちて果てて、腐ってゆく。

体を半分腐敗させたまま、人形のように扱われ、死を、そう解放は、死ぬことでしか得られなかったというのに。

完成した破壊の神は、それなのにまだ先を繋ぐ為、男達に蹂躙され、子を孕み、産み捨てた。


(…逃れられない)

螺子を止めれば再び巻き返される毎日。

浅く死んでは生き返り、ただ腐り続ける己の身に畏れをなして。

ただ脅える、毎日。



『殺してやる…っ』

すべてを。

すべてを。



『消し去って、やるから…!』

血の滲む「初代」の悲鳴と怨みは、僕に向けられたもの。


『…消えれば、いいのに』

無気力に吐き出された橘のそれはなにより、そうなにより、僕に向けられた、ものだった。


『ぜんぶ、もう…』

過去も未来も現在も、そう、この血だらけの体も、醜い、化物の姿も。





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