手紙

　少し不思議なのですが、これは彼女の遺書なのでしょうか、それとも決意文なのでしょうか。もちろん、警察の方によると、遺書だと言われていますが、私には少しおかしい気がするのです。あなたと話す、無駄なら最終手段に出る、という文面から、彼女が死のうとしていた確率は低いような気がするのですが。
　今となっては、真相を追究することはできないとわかっています。ですから私もこれ以上は何も言いません。
　そう言えば、あなたはお腹に新しい命を宿したそうですね。もしかして、父親はあの人ですか？　おめでとうございます。これからは大変になると思いますが、頑張ってください。
　あの人のブログによると、今度オーストラリアのほうへ転勤になるんだとか。取引先の会社の社長令嬢との縁談も良好に進んでいるそうです。簡単だった、と言っていました。
今になってようやくわかりました。あの人の言う「簡単」とは、自分の思い通りにできるという意味だったようです。馬鹿は一生治らないというのは、あながち間違っていないかもしれません。
　真っ直ぐで何があってもめげない強い人、それがあなたでしたね。ですから周りもきっと、あのときのようにあなたのところへ駆けつけてくださると思います。
　何せあなたは、物語の主人公なのですから。
　あなたなら、大丈夫。

　　　　　　　　　　　　　　　　あなたの友人より










　　　　　Fin.