銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
皆消えた。

其の考えは油断に繋がる。

「ぁぁああああ!!」

叫びながら七本の短刀を振りまわす女。

「赤月 万里……」

アカヅキ バンリ

謳う仄かな紅髪も、

真珠の様な肌も、

夕陽をそのまま映しとった瞳も、

全てが世界に愛された者が持てる物。

そう、彼女は世界に溺愛されている。

「私は問わないよ、鎖葉斗。

貴方が私を殺した理由知ってる。

でもね、許さないから。

私は爾来様を守らなきゃならないの。」

爾来に忠実な操り人形・赤月 万里。

彼女は他の屍とは違う。

死界に逝こうが姿は美しい容姿のまま。

「いいのかい?

君は爾来の覚醒に……」

赤月は僕の問いかけを遮って襲いかかる。

「私は爾来様が目覚めるのを待つの!

約束したの!」

虹色の短刀を自由自在に動かす。

僕の頬をそいつは掠める。

「自分の立場を弁えろ!」

鎌を赤月の右肩に降ろす。

右肩は悲鳴をあげるが如くに音を立てて崩れる。

「さようなら。」

赤月の背中に鎌を振るい落とそうとした。

其れが最後の止めになると思ってた。

だけど僕は戸惑ってしまった。


『死なないで……』


僕の脳裏に浮かんだのは、
吾平君の死を拒み、望む白江様の姿だった。

意思と関係無く、僕の腕は止まった。

次の瞬間、短刀がボクの背を貫く。

「貴方は甘いの。」

赤月が笑った。
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