それぞれの恋の結末





 そう言い残して、母は居間から出て行く。

居間に残された沙菜と迅は互いに顔を見合わせて、次に視線を机の上に置いてある『手紙』もとい『本』へと移す。




「………つまり、その姫様は自分の政略結婚が決まった歳には自分の子孫にも結婚相手を見つけるようにしたって事? ……パパが必死になるのも分かる気がする。なんか、本当になりそうだし」



「……まぁな。ま、詳しい事はこれを見なきゃ分かんないって事だろ」



 迅はそう答えながら、目の前に置いてある本を開く。
………そこにはまさしく、昔の物だと分かる流麗な文字が綴られていた。




「………読めるのかよ」



そう呟く迅を横に、沙菜も苦笑を漏らす。
しばらく、その文字をじっと見ていると2人は同時に驚いたように声をあげる。





「「………読める」」



 そう呟き2人はまた再度、顔を見合わせる。
そして、クスリと笑いあって、




「……読むか」



 迅はそう言いながら、沙菜の頭を撫でる。
……無意識の行動なのだろうが、その行動が沙菜にとっては嬉しくて。




「うんっ」



 そう答えて、迅の手に自分の手を重ねて本へと視線を戻すのだった。



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