それぞれの恋の結末






 平安後期、貴族の統制ではなく武士の統制が始まろうとしていた時代。
幼少期より大切に育てられてきた小柳家の姫君、牡丹にとって、今回出された柊家子息との婚姻は見るに分かるように自分を『道具』として使われているようで嫌だった。


何より、牡丹には幼い頃から好いている人が居るのだ。





………私の好きな人は、





『『『きゃあああぁぁぁーーー!!?』』』



『毒見役の女御がっっ!』



『姫様の昼餉に毒がっ!』



『検非違使(けびいし)をっ!毒をもった者はまだ屋敷内にいるはずです、早く探しなさいっ!』



「(………そんな。八女が……)」





 時刻は昼時。


いつもは自室で摂るのだが、父や母に聞きたいこともあり、大広間で昼食を摂ろうと移動していると、すぐ近くの部屋から屋敷勤めをしている者たちの悲鳴が聞こえ、何事かと思い中をのぞいて見るとそこには自分付きの女房が目を見開き、倒れている。


周りの女房たちの言葉を聞いていると、なんと自分の昼餉に毒が盛られていたと言うで
はないか……。
牡丹は顔を蒼白にして、倒れている自分付きの女房に手を差しのべようとする。





「触れてはいけませんっ!」



触れようとする牡丹の行動を止めるように、哉匡が彼女を背後から抱きしめる。




「姫は柊家へ嫁ぐ大切なお方です。むやみやたらに触れようとしないでください」




『『戦好きですものね、柊の方々は』』



『『あぁ……、きっと和平条約が気に入らない奴らの仕業でしょう』』




「……っ!」



「牡丹姫っ!」



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