それぞれの恋の結末





 ……哉匡にそう言われ、ツキンッと小さく胸が痛む。
そして、さらに拍車をかけるように周りの者たちの言葉を聞いて、自分は柊の家に行ってどうなるのかと不安になり、哉匡の腕を振り切って走り出す。






――――……哉匡の嘘つき。





『私、嫁ぐのなら哉匡のところへお嫁に行きたいわ』



『……浩章(ひろあき)様のご機嫌を取っとかなきゃな』



『父上は、哉匡だったら反対なんてしないわ』



『牡丹、………お慕いしています』





1年前、そう言ってくれたのは哉匡だったのに――――……。




哉匡……






「……戦ってでも、私を手に入れるという事は無理なのでしょうか?」




 桜や鈴蘭、水仙……季節折々の花が咲く庭で涙を流し、俯いて必死に自分の気持ちを伝えようとする牡丹は、言葉を詰まらせながらも更に続ける。




「私ではなく、……平和を取るのですか?」



 そんな牡丹の姿に、哉匡はその華奢な体を引き寄せようと手を差しのべて……やめる。
そして彼女の前で肩膝をつき、腰に帯びた太刀を目の前に持ってくると瞳を伏せ、そっと誓いの言葉を口にする。





「一生、あなたの傍に仕え、あなたをお守りすると誓います。姫」



「…………っ!」





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