星屑
「…いや、あたしどっちかと言えば、二兎から追われてない?」


それもそうだね、と樹里は、他人事のように笑う。



「奈々は欲張りだよねぇ。」


そんな風にしているつもりはないのだが。


別にどちらにもコクられたとかってわけではないし、勝手に向こうから近寄ってくるだけなのだから。



「樹里だって先輩らから人気じゃん。
それに少なくとも、うちらの中で唯一アンタだけ彼氏いんだよ?」


だから一応、世間一般的な見方としては、樹里が一番幸せ者のはずだが。


なのに彼女は、ちっとも嬉しそうじゃない顔で、頬杖をつく。



「ツカサはさ、確かに優しいけど、それだけなんだ。」


ツカサというのは、樹里の彼氏の大学生。



「ほだされたから付き合ったけど、今は情だけなんじゃないかって時々思う。」


「あんま会ってないの?」


「んー、微妙。」


彼氏がいても上手くいかないのと、それ以前にそんなのいないのとでは、どちらがマシなのだろうかと思う。


やっぱり答えなんて出ないままで、どうしたものかなぁ、と宙を仰いだ。



「寂しいだけで付き合うのってさ、相手に対してどうなの?」


「わかってるよ。」


わかってるんだけどねぇ?


迷いを帯びた樹里の苦笑いは、寂しさゆえ。


欲張りなのは彼女の方じゃないのかと、責めるでもなく思ってしまう。

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