星屑
ぞくりとするほど冷たい瞳に見つめられた。


何に対しても執着心なんてものを持たないと思っていた彼の、それが本気の顔だろう。


でもそれは、あたしと自分を重ねているが故だ。



「そういうの、我が儘、って言うんだよ。」


「知ってるよ。」


勇介は、そう口元だけで笑って見せた。


あたし達は、きっと抱き合うことが自然で、でもそんなことは、人から見れば一番不自然なのだろう。


だって互いに愛し合ってなどいないのだから。



「まぁ、ここで何もされないことに感謝してほしいけどね。」


ちっとも笑えないことを言いやがる。


すうっ、とあたしの唇を滑ったはずの自らの指先を、彼はぺろりと舐め上げる。


相変わらず、そういうことの似合う男だ。



「エロいよ、馬鹿。」


「それも知ってる。」


けど、奈々は泣き止んだね。


そんな台詞に思わずバツが悪くなり、視線を外した。


が、可愛いねー、と無邪気な言葉で彼は笑う。


こういう緊張感のないところに呆れながら、でもそんなところに安堵している自分がいる。


その瞳には優しさと冷たさが混じり合い、だからいつも、彼の考えていることはそれに映ったりはしないのだ。


本当は、互いにこれ以上踏み込むべきではないのだろうけど。

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