星屑
教室から窓の外に視線を投げ、力を抜いてみれば体が弛緩する。


もうずっと、頭の中を占めていたのは勇介だった。


だから多分、ヒロトがどうとかいう問題ではなく、でも彼ではダメなのだろうと思う。



「元気ないじゃん。」


振り返ってみれば、笑っていたのは樹里だった。


まぁね、とだけ返してまた外へと視線を向けてみれば、彼女も身を乗り出すようにして窓枠に頬杖をついた。


あの大学生と別れたという話は聞いたものの、それ以上のことは今も知らないままだ。



「ねぇ、あたしって勇介のこと好きなのかな?」


思わず漏らしてしまった疑問符に、樹里は目を丸くしてこちらを見た。


そしてあたしに聞かれてもねぇ、なんて言いながら、視線は外される。



「アンタがヒロトのこと好きになれないなら、それってしょうがないことでしょ。」


まったく、勘の良い親友だ。


思わず苦笑いを浮かべてしまい、前より少し強くなった陽射しに目を細めた。


青々とした芝生の色も、陰りのない空の色も、もう夏も間近という証拠のよう。



「勇介と付き合うの?」


自分で聞いておいて、あたしが答えるより先に、じゃあヒロトが泣くなぁ、なんて彼女はおどける。


彼の一瞬だけ見せた寂しそうな瞳は、今もまぶたの裏にこびり付いていて、だからそれを思えば無性に罪悪感に駆られるのだ。


あたしとヒロトは、一体どちらが卑怯なのかがわからなくなる。



「いっその事、どっちとも付き合っちゃえば?」


「何でそうなんのよ。」


あたしが口元を引き攣らせるも、ふと、思い付いたように樹里は、そういえば、と言葉を手繰り寄せた。



「ねぇ、大地って沙雪に本気だと思う?」

< 183 / 418 >

この作品をシェア

pagetop