星屑
「でもお金持ちじゃんかぁ。」


不貞腐れて見せたあたしに彼は、



「別に俺が稼いでるわけじゃないし、ただ親の金ってだけじゃん?」


そう言って、階段を昇る。


親、というワードで、また忘れかけていたことを思い出した。


確か彼のおうちは、両親の仲が険悪で、だから勇介は何も言わないけれど、心を痛めているのだろうということ。


言ってしまったあとで、小さな後悔に駆られた。


一緒になって階段を昇り、案内されたのは勇介の部屋。


やっぱりあたしの部屋より広くて、でも整然としているというか、物は少ない。


ただ、棚に並べられているCDの数には驚かされたけど。



「適当に座ってよ。」


勇介は煙草を咥え、棚の前で目を細めた。


南向きの部屋はよく陽が射していて、おまけにテレビもローテーブルもソファーもある。


だからまるでワンルームに来たみたいで、落ち着けるはずなんてない。



「あった、これだ。」


棚からCDのケースを引き抜いた勇介は、それをあたしに差し出してきた。


確かにそれは、あのショップで見たものと同じだ。



「ねぇ、聴いてみたい。」


言ってみると、彼は目を細めて笑った。


それから咥え煙草のままにCDをデッキにセットし、勇介は幾分楽しそうなご様子だ。


あたしはベッドサイドに腰を降ろし、彼はソファーに座った。

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