星屑
「沙雪は彼氏がいても何かを抱えてるっぽいし、樹里はもうずっと元気ないし。」


あぁ、あのふたり?


思い出すようにそう言って、シンちゃんは困ったような顔をした。



「ヒロトは好きとか冷めたとか意味わかんないし、勇介も俺の気持ち考えろ、とかさ。
スッチだって何考えてんのかわかんないし、大地くんなんていきなり帰るんだよ?」


まるで今まで溜めていた愚痴を吐き出すように一気に言って、あたしは口を尖らせた。


彼は考えるような顔をした後で、そんなもん知るか、と一蹴する。



「つーか、お前の脳内は恋愛一色かよ!」


言われて初めて気が付いた。


きょとんとするあたしと、呆れ顔になるシンちゃん。



「ったく、結局お前ら親子は同じことばっかで悩みやがって。」


「…ママも?」


「そうだよ、あの馬鹿。
昔から俺んとこ来ては恋愛相談ばっかしてくるんだから。」


そう言って、シンちゃんは怒りを思い出したようにぐちぐちと言い始めた。


確かにママは恋愛体質なのでそんなのもすぐに想像出来るけど、改めて、全然違う世界に住んでるふたりの出会いが気になる。


彼はずっとこの街で生きてきたとか聞いたことがあるけど、だからこそ、ママとの接点なんてどこにもないのだから。


と、いうか、この人はあたしの前で、一度としてママのことを名前で呼んだことがない。


正直、それすらおかしなことなのだ。



「ねぇ、何でそんなママと、ずっと友達やってんの?」


聞いた瞬間、シンちゃんはぴくりと眉を動かした。


が、ただの腐れ縁だ、なんて言うだけで、彼はやっぱり決して多くを語ってはくれなかった。


このふたりの関係も、“父親”のことも、あたしは未だに知らないままなのだ。

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