星屑
キスを落とされる度、切なくなる。


抱き締められる度、愛しさばかりが増していく。


これが出会って数時間の男に抱くような感情ではないはずなのに、今日のあたしはやっぱり変だ。


だからって互いのことを話すでもなく、知ろうともしない。



「ねぇ、明日の天気、知ってる?」


「どうして?」


「星、見たいの。」


勇介は一度考えるように宙を仰ぎ、そして何かを思いついたようにぱあっと顔を明るくさせ、あたしを見た。



「じゃあ、俺が魔法使ってあげるよ。
奈々が明日、星が見れますように、って。」


その言葉に少々呆れ、あたしは肩を落として体を起こす。



「それって本気で言ってる?」


「本気だよ。
けど、俺が魔法使いだってこと、誰にも言っちゃダメだよ?」


「あー、はいはい。」


煙たくあしらうように言うと、勇介は笑った。


このラブホテルに窓はない。


だから明日の天気どころか今の空模様がどんなものかさえ、ここから確認することは叶わないのだ。


憂鬱さを拭えなくなって視線を外すと、彼はあたしを後ろから抱き締めるような格好で、耳元に言葉を落とす。



「大丈夫、きっと明日は星が見られる。」

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