星屑
結局、未だ制服のあたし達が行ける場所もなく、うちのマンションに向かった。


どうせママ達は昔話に花でも咲かせているのだろうし、当分は帰って来ないだろうと思う。



「お腹空いてない?
あたし、何か適当に作るよ。」


勇介は、リビングできょろきょろとしている。


なのであたしはキッチンに立ち、冷蔵庫を漁った。



「何かさ、不思議な感じだよね。」


彼は笑いながら呟いた。


だってあたし達が今、ここにこうしていることこそが、きっと奇跡なのだろうから。



「ねぇ、寂しくならないの?」


「離婚のこと?」


言って、彼はふっと笑う。



「別にさ、親には親の人生があるわけじゃん?
それに仮面夫婦で居続けられても、こっちが余計に気使うしさ。」


だから良いんだよ、と言って、勇介はチェストの上に置いてある写真立てを持ち上げた。


そこには、幼い頃のあたしとママが写っている。


それを見つめる彼の瞳は、柔らかいもの。



「うちの母さんはさ、静香さんの子供である奈々のこと、許せないかもしれない。
でも俺、何年掛かっても説得しようと思ってるから。」


優しい人で、だから泣きそうになってしまう。


勇介は、そんなあたしを後ろから抱き締めた。



「好きだから、泣いたらダメだよ。」

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