星屑
涙混じりに顔だけを振り返らせると、隙をついたように唇を奪われた。


そういえばこの人のキスはいつも突然だったのだと、今更思い出してしまう。



「俺ら、これからちゃんと付き合おうよ。」


困ったように笑いながら言われた台詞。


どうしてこの人はいつも、緊張感なんてものが欠片もないのだろう。


それでもただ嬉しくて、あたしはこくこくと頷いた。


涙が拭われ、またキスを落とされる。


抱き締められている腕は心地が良いけれど、でも、ご飯を食べなきゃ死んでしまう。



「ちょっ、ストップだってば!」


そう言って強引に体を離すと、彼はあからさまに不貞腐れたような顔になった。



「言っとくけど俺、あの頃から相当待ってるんだよ?
昨日だってどんだけ我慢したか。」


「けど、こんなとこで変なことしないで!」


「はいはい、もう良いですけどねー。」


勇介は、降参のポーズで手をヒラヒラとさせる。


真っ赤になりながらもあたしは、料理の続きを再開した。


折角の嬉しさも、こんなんじゃ台無しだ。



「まぁ、奈々の寸止めにはもう慣れたけどね。」


そんな嫌味を背中で聞きながらも、あたしは無視を貫いた。


それからあり合わせで肉じゃがを作り、ふたりで食べた。


何だか新婚さんみたいだね、なんて言う勇介の言葉には、やっぱり恥ずかしくなってしまうのだけれど。

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