星屑
何だかんだで、彼は樹里の尻に敷かれているのかもしれない。


だから思わず笑ってしまうのだけれど。



「ババアも嬉しそうな顔してて、そんな時に子供出来てるってわかって。
じゃあもう、ダブルでめでてぇよな、って。」


「親は反対しなかったわけ?」


スッチは身を乗り出して聞いた。



「うちの兄貴もこの前子供生まれてさ、だからババアは大賛成。
樹里んちの親は反対してたけど、俺頭下げて、わかってもらえた。」


ヒロトが、頭を下げた?


想像するだけで噴き出してしまいそうで、そんな彼に睨まれる。



「コイツすっかりババアと意気投合してるし、ふたりで買い物とか行くんだぜ?」


ヒロトが言うと、樹里は得意げに笑う。


あたしは彼の悩みも葛藤も、受け止めることすら逃げていたけれど、でも樹里は違うのだろう。


だから、心底幸せになってほしいと思う。



「まぁ、めでたいことだらけなわけだよ。」


ヒロトはそう、まとめるように言う。


沙雪は泣きっぱなしで、あたしもまた、目頭が熱くなった。



「樹里ちゃんの子だし、葛城に似なきゃ、きっと可愛い子だろうね。」


勇介が茶化すと、



「お前、いつもながらにムカつくよな。
つーか土屋に祝われたくねぇから。」


と、彼は口元を引き攣らせていた。


本当にこのふたりは、互いを邪険にすることしか言えないらしい。

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