星屑
「奈々、お勤め御苦労!」


ぐったりしながら教室へと戻ってみると、声を掛けてきたのは樹里だった。


彼女はあたしの隣、つまりは沙雪の席に座り込み、ケラケラと笑っている。



「笑い事じゃないよ、まったく。」


「あたしだってさっきまで、さゆのノロケに付き合ってたんだからねぇ?」


「…ノロケって、一言二言大地ってのと話しただけで?」


「そうそう。
もう、格好良い、格好良い、って連発しててさ。」


ありゃ相当だね。


そう付け加え、樹里も苦笑いを浮かべていた。



「で、そんなに格好良いの?」


「顔はまぁ、良いと思うけど。」


「…けど?」


「ぶっちゃけあたし、あんま好きじゃない。」


ふうん、と樹里は言う。


まぁ、あたしが今まで、沙雪の好きになる男を良いと思ったことはないのだけれど。



「でもさ、勇介の友達でしょ?」


「いや、そうだけどさぁ。」


「さすがに変なことにはならないでしょ。
てゆーか、挨拶した程度でそんなことまで心配してるうちらってどうよ。」


彼女が突っ込み、あたしが笑う。


あたしも樹里も、沙雪が簡単に男を好きになり、そしてすぐに別れ、なのに相当落ち込むことを知っているから。


あの子は良い子だけれど、恋愛体質だから心配にもなる。

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