君の声
「由衣」
立夏の声にケーキのお皿を手にしたまま見上げた
「ごめん、仕事なんだ…書斎にいるから村田さんに部屋に連れてってもらってね」
小さく頷くと「ごめんね」と頭をぽんっと叩いてリビングから出て行ってしまった
リビングには村田がいてソファーの後ろに控えている
まるでどこかのお嬢様のような気分……にはならなかった
(…うぅっ……気まずいよ……)
かと言ってベラベラ話す気もない
ベラベラ話す人は苦手なのだ
由衣は頷くぐらいしかできないからだ