ひだまり

出会い

駅伝チームの練習についていくのは、必死だった。
専門に練習してきた先輩たちにはとても追いつけず
夏休みまでは
アップの10キロジョギングに遅れずに付いていくのも大変だった。

そんな中、アシスタントコーチの佐野先生は
「倉沢さん、徐々に付いていけてるようになってきたから、焦らず大丈夫!」
など、時折一人しかいない一年の私に温かい声をかけてくれていた。

だが、その声がかかると必ず
「今度の一年、たいしたことないよね~」
聞こえよがしに言う先輩の言葉も日課になっていた。

というのも、佐野先生がチームにきてから、
その温和な人柄と、さわやかで清潔感のある若い先生と言うことで
生徒たちから絶大な人気を得ていた。
先輩たちもその一人で
先生が時折、自分たちよりも私に声をかけることをおもしろく思っていなかったのだ。

先輩たちが怖いからあまり声をかけないでよ~と、思ったこともあったが
佐野先生のメガネの奥に見えるやさしそうな目に
とても癒されていたのも事実だった。



まもなく夏休みというころ
さすがに夏休みの練習はないだろうと淡い期待を持っていたが
そうは甘くなかった。

「さて、今度の夏休みの練習予定だが・・・」
岡部先生が話し始めた。
やっぱりあるのか・・・。

「例年通り、山岳ロッジで合宿を行う!よって、皆、準備しておくように!」
よりによって、合宿とは・・・
ただせさえ先輩の当たりがきついと言うのに。
私は一気に夏休みの期待を裏切られることとなった。

まぁ癒し系の佐野先生が一緒なら、なんとか乗り切れるかも。
と、自分でも気づかないうちに
佐野先生の存在が少し特別になっていた。
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