指輪
「こりゃ手厳しいね〜。んじゃ俺の話に付き合ってくれないか?女子高生さん」


その言葉で初めて名乗っていない事に気付いてはっとした。


またあの笑いをしてから話出した。


「俺、隆昌。現在長期休暇中の平社員で〜す」


完全に私の事をおちょくっている。


隆昌と名乗った男の着ている服は私でも知っている程有名なメンズブランドのTシャツにブランド物の腕時計。


平社員がこんな物を付けたまま海に入る訳がない。


「亜夏波(アゲハ)。よろしくね、嘘つき平社員さん」


そう私が言ったらキョトンとしてからケラケラ笑い出した。


私の推理が外れたのかと思った瞬間に顔に血が集まって行く感覚がした。


「い、いや…ククッ。合ってるよ!」


そう言いながらもクックと声を押し殺して笑っている。


「合ってるなら笑わなくてもいいじゃない」


笑われた事に少し怒りながらいまだに笑っている隆昌に呆れた。


「悪い悪い。いやぁ、女子高生にまでバレるとは思わなくてね」


と言う事は今までも何度か言って来た事なのか。


「あなた私を馬鹿にしてません?」


睨みながらそう言ってやると“滅相もない!”なんて言いながら私の横に腰掛けた。


「ところで本当は何してるの?」


「何?俺に興味でもあるの?」


「そんな物これっぽっちもないわ。ただアンタみたいなのがどうやって楽して金儲けしてるのか気になるだけ。」


「“アンタ”って…。まぁ良いけど。俺これでも凄いんだよ〜」


「そんな事どうでもいいから早く教えなさいよ」


「しょうがないな〜。俺カフェのオーナーやってんの。まぁ夜はバーになるんだけどな。」


「へぇ〜カフェってこんなチャランポランにも出来る物なのね〜。」


私もやろうかしら。と呟いていると私の頭を小突いてきた。


「ば〜か。てめぇには無理だ。」


「なんでよ。アンタに出来て私に出来ないなんておかしいわよ!」


「大人を馬鹿にするなよ。」


「大人は馬鹿にしてないわ。私はアンタを馬鹿にしてるだけ」



< 3 / 7 >

この作品をシェア

pagetop