とある男女の攻防戦
……また、虚無感。
どうしてだろう。すべて先回りしてくれた事に感謝するべきなのに。
私が急がなくていいように気遣ってもくれたのに。
この空っぽな気持ちが沸き上がるのは。急ぐ必要もなくなった私はとぼとぼと、足を見ながら歩きだす。溜息を吐きながら。
電話の相手……孝治(こうじ)とは
3年前に出会った。大人で、落ち着いていて、優しくて、経済力もあって。告白されて、すぐに付き合い始めた。
付き合い初めた頃は良かったのに。いつからだろう。先に先に行ってしまう孝治に何故か満足できないのは。
孝治に悪い部分はどこにもない。だけど、ただ、私が子供扱いされてるようで、嫌なの。
……自分が未熟だからそう感じる。
それは分かってる。
倦怠期なのかな……。急ぐ必要が無くなってゆっくり歩いていたけれど。
歩いていればいずれは着く駅。中年のサラリーマンが帰路に急いでいるのか飲みに行くのに急いでいるのか改札を足早に通過していく。その中ゆっくり歩く私は邪魔らしい。
抜いていくおじさんが横目で見ていく。何よ。