とある男女の攻防戦

「貴方はどこ見てたのよ。私はともかく貴方は前を向いてれば私をいくらでも避けれたはずでしょう?」


私の場合はしょうがない。


でも、貴方は目の前から近寄ってきた私に気づいたはず。避けることくらい可能だったんじゃないの?



「あー……どこ見てたんだろう?」



「………」


「気づいたらぶつかってて……ね」




ね、じゃない。ヘラっと笑って誤魔化すな。







「とりあえず謝ってもらえませんか?」


一言謝ってさえくれればもういいから。足を怪我したのだってもうしょうがない。



今さらどうのこうの言ったって
怪我は治らないんだから。ただこの苛立ちを沈めてくれる謝罪を。


「んー……ごめんね?」



ちゃらいわ。謝られてる気がしないし、何故語尾を上げる?首を傾げんな。







「……悪いと思ってる訳?」



「一応」



「、ふざけてるの!?本当なら慰謝料請求されてもおかしくない……、」



言い掛けて、止めた。



本当に慰謝料をとる権利があるのかどうか知らないけど、次の、乗ろうと思っていた電車が来たから。

湿布代くらい請求してもいいけれど、私がぶつかったせいも少しはあるからもういいや。


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