とある男女の攻防戦
「私も行ったほうが良いと思います…」
店長の担当していたお客さんにも言われる始末。
「………分かった。行きますから」
「今日ですよ!?今日!」
「うん……」
少し体勢を変えようと椅子の上で体を動かせば
またズキン、と痛む足。
昔はこのくらいのケガ、すぐに治ってた。……私も歳なのかもしれない。
「――麻夕」
店長に大丈夫?と何回も聞かれながら
頭を下げて店を出て。少し歩いた所でプ、と短いクラクションの音と共に私のすぐ隣へと横付けされた車。
「孝治さん?」
「メール見た。病院行くんだろ?送ってくよ」
一瞬なんのことだか分からず間が抜けてしまったけれど、
助手席の窓が開き、見えたのは孝治さんで。
自然と笑顔がこぼれる。「乗って」そう言われ、助手席のドアを開けてすばやく乗り込む。