とある男女の攻防戦

困ったように笑う穂積さん。短めの黒髪をワックスで軽く立てるように遊ばせて顔もシュッとしていて。まぁ…目の前の男が言うのが分かる。



「だって職場周り女ばっかだろ?」

「んー…まぁ場所が場所だからなー…話すって言ったら女の人が多いか。男もいるっちゃいるけど」




「羨ましいわー」


「会社にだって女はいるだろ」




「いるけどさー…うーん…」


理想が高いんじゃないか。
そう思いながら目の前で繰り広げられる会話を黙って聞いていれば。



目の前の男は穂積さんから私へと視線を移す。


「…麻夕ちゃんは仕事何してんの?」









振られた話題がさっきと逸れてて良かったと思う。


「ネイリストです」


「わーっぽい!」



嘘吐け。答えてそんなこと言われたこと一度もないわ。


「…そう?どこが?」




盛り上げてくれようとしてるのか。テンション高くそう答えた男の横で、同じように私へ視線を向けた穂積さんが首を傾げて言う。



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