あの空の、
「だって、2人で花火見たかったんだよ」
ヤエはまた無表情で言った。
真剣な時には無表情になるのがヤエの癖だ。俺はそれが分かるから、茶化さずに静かにそれを聞いた。
ヤエは続ける。
「だってさ、いっつも家から見る花火って、遠くに小さく見えるだけじゃん」
「あぁ、確かにな」
「私それも好きだよ、けどやっぱ高校最後の年くらいさ、」
そこまで言って、ヤエは腕を大きく広げた。
「あの空いっぱいに広がる花火、見てみたかったんだよ。」
そう言って、俺を見ながらヤエはふいに微笑む。
「もちろん、遥も一緒に」
俺は、顔が熱くなるのを感じた。流石に高3にもなれば分かる。
そうか、ヤエは……
「ま、結局無理になっちゃったけど」
ヤエはそう言ってガクンと腕を下ろす。
「…脱臼するぞ」
いいんだよーとヤエは腕を振り回す。俺は、仕方ねーなと呟いて、ヤエの振り回す腕を掴んだ。
「え、なに?」
「行くぞ」
そう言って、俺はヤエの腕を引っ張りながらもと来た道を走った。
ヤエが後ろで嫌がる声を無視して、ひたすら走った。