浅葱色の瞳に
「―…手を離されませ」



均一に安定した声色は棒読みに近い




呼び止めに気付く前に、小型の刃物は喉元で存在感を醸し出している





…本日二度目の"死"の恐怖




こんな恐ろしい所に少し、慣れを感じたのは気のせいだろう





「…貴女が怪しげな動きをし様ものなら、即座に斬り捨てよと仰せ付かわって居ります故、どうぞお手を離されます様…」




何だって此処の人はこんなに動きが素早いのだろうか




ただならぬ殺気は思考回路まで停止させる




怯える処か驚愕すら出来ない




ただわかるのは




右隣に佇んだ、顔も確認出来ない"誰か"はあたしに警告してくれているのだろう





「あ…あ、あなたが思ってる様な事をするつもりはないです…!」




否定するのが精一杯



本来なら考えてもみない事で疑われるのに怒りを感じる筈だろうけど


此の人の殺気と圧倒的な存在感は、灯火を上げようとする怒りを直ぐ様消してしまう




「き、凶器になる様なものなんて持ってないですし、疚しい事だって何一つありません…だから、其、しまって…下さい!」




生活音さえ聞こえない殺気による無音の世界


だから、尚更、空気が研ぎ澄まされて



ピリピリと手足が痺れているのがわかる
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