愛へ
あたしがいくら誰だと訊ねても、そいつは、あたしと付き合うことを勝手に決めて、さっさと立ち去ってしまった。

何なんだ、あいつは。

あたしがそう思っていると、周りの女子たちがヒソヒソと話し始めた。

どうせ、また男変えたんだとかそういう悪口だろう。

女子は悪口しか言えないから嫌いだ。

そして、あたしの耳に飛び込んできた悪口の中から、あたしはあいつの名前を知ることが出来た。

藤堂誠。

本当に誠実な男なのかは分からないけれど、まあ、そいつの名前が何であろうとどうでもいい。

だって、どうせ、あたしは、一週間もしないうちに飽きられて終わるんだから。

第一、あたしも一人の男に何週間も付き合っていられるほど、気が長くない。

あたしは何だって飽きっぽいのだ。

とくに、男に関しては。


「藤堂誠、ねえ」

あたしはそう一言呟いて、残った紅茶を飲み干した。

ストレートで砂糖の入っていない紅茶は自分みたいで、好きだ。

余計なものはいらない。

愛なんて、邪魔だ。

あたしは、そう思っている。



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