恋時雨~恋、ときどき、涙~
【心の中に耳はないよ
 わたしの心の中にはうさぎがいる】


メモ帳を見せると、健ちゃんはぽかんと口を開けた。


「は? うさぎ?」


【けんちゃんと一緒にいると、わたしの心の中でうさぎがとびはねる】


メモ帳を見た健ちゃんは、ちょっぴり驚いた顔をした。


でも、すぐに、わははははと笑った。


「おれも、同じだんけ。真央と一緒にいると、うさぎが飛び跳ねるんけ」


【なんだ よかった
 わたしだけへんなのかと思った】


わたしと健ちゃんは、同時に微笑んだ。








ご飯を食べた後、わたしたちはもう一度、園内を1周見て回った。


健ちゃんと一緒に見るものすべてに、音が見えた。


15時になると、肌を突き刺すような陽射しがやわらかくなり始めていた。


深緑の葉っぱに、湿った陽光が滲んでいる。


園内の出口付近にあった売店で、わたしは足を止めた。


ぬいぐるみやストラップ、マグカップにキーホルダー。


動物園の仲間たちがモデルのグッズが、たくさん並んでいる。


わたしは健ちゃんの背中を叩き、メモ帳を見せた。




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