恋時雨~恋、ときどき、涙~
「それからは、果江の消息が分からなくなった。たぶん、引っ越したんだと思う。エアメールは返ってくるし、電話も……」


わたしは亘さんの唇を読みながら、その向こうに2年前の健ちゃんを見ていたのだと思う。


空港で果江さんを待ち続ける健ちゃんの背中が、とても小さく見えたような気がした。


わたしが健ちゃんの立場だったら……耐えられない。


うつ向いたわたしの肩を叩いて、更にたたみかけるような事を、亘さんは続けた。


「健ちゃんは、まだ、果江を忘れてない。それに、果江も」


わたしは、メモ帳にボールペンを走らせた。


【でも、かえさんには、愛している人が】


亘さんは困った顔をして、黙り込んでしまった。


しばらく、重い沈黙が続いた。


周りのお客さんたち和やかなムードなのに、わたしと亘さんのテーブルだけ沈んでいた。


重たく淀んだ空気に、わたしは押し潰されてしまいそうだった。


わたしは、いらいらしていた。


メモ帳に少し乱暴な字を長く綴った。





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