恋時雨~恋、ときどき、涙~
【けんちゃんと海に行きました
 けんちゃん、言ってた
 ずっと辛かったと
 かえさんのことだったんだね】


そこまでを見せて、わたしは再びボールペンを走らせた。


【でも
 けんちゃんは前を向き始めたと思う
 わたしを、知りたいと言ってくれた
 わたしも、けんちゃんを知りたいと言った】


そう書いておきながら、わたしは自分に呆れてしまった。


だから、どうしたと言うのだろう。


亘さんが事前に、気を悪くしたらごめん、と言ってから続けた。


「海に行った事は、健ちゃんからきいたよ。でも、自惚れないで。健ちゃんは、きみに、果江を重ねてるよ」


わたしは、軽率過ぎた自分の考えに呆れてしまった。


あの海での一件以来、確かに、わたしは自惚れていたのだ。


「本当に、似てるんだ。気の強いところ、負けず嫌いのところも。果江と、きみは」


〈似てない!〉


乱暴な手話をして、わたしは亘さんを睨んだ。


悔しかった。




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