恋時雨~恋、ときどき、涙~
『我慢したら、鼻が伸びるんけ』


優しく動く健ちゃんの唇を、わたしは思い出した。


あれは、健ちゃんが考えた、即席の冗談なんだと思っていた。


『おれは、10メートル伸びたことがある』


たぶん、10メートルどころではなく、健ちゃんの鼻は伸びたのだろう。


『ライオンになりたい』


強くなりたいと言った健ちゃんは、この2年間を我慢ばかりしてきたのだろう。


エアメールを読み進めるごとに、今日までの健ちゃんの一言一言が、わたしの心に響いた。


健ちゃんは、その一言一言を、わたしではなく果江さんに言いたかったに違いない。


わたしは耳が聴こえない分、たくさんの文章を読んできた。


でも、ここまで我慢が詰まっている文章を読んだのは、初めてだった。


胸が張り裂けた。





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