恋時雨~恋、ときどき、涙~
順也と別れた日から、静奈と連絡が取れなくなってしまっていたのだ。


ラインをしても返事はないし、静奈は短大の後期の講義に一度も来ていない。


我慢できなくて、静奈の家に行った日があった。


でも、静奈の両親は共働きで、いつも留守だった。


でも、ある日、静奈の弟が居たことがあって、こう言ったのだ。


「最近、家に帰ってないよ。連絡したら、友達といるって。真央さん、知らないの?」


逆に訊かれて、わたしは面をくらった。


その事を、わたしは、誰にも言えずにいた。


順也にはもちろん、お父さんやお母さんにも。


連絡が途絶えてしまった、あの人にも。


健ちゃん。


もう、果江さんとの未来のために歩き始めているのだろうか。


わたしの目に映る物は、全て、殺風景になってしまっていた。


ただ、洞窟のような心で、ふわふわと綿帽子のように夢の中をさ迷っている毎日だ。


どうして、人は前しか見る事ができないのだろう。


360度、いろんな角度から、人工衛星のように監視する事ができたらいいのに。


そうすれば、静奈の苦しみも、健ちゃんの気持ちも、わたしが知ることができるのに。





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