恋時雨~恋、ときどき、涙~
確かに、がっくりしてしまうほど、見ているこっちが恥ずかしかった。


黒く車高の低い車の前に立ち、人目もはばからずに、健ちゃんはジャンプをしながら両手を振り回していた。


わたしの気持ちは、震度7強の地震くらい、激しく揺らいでいた。


今、健ちゃんのところへ駆けて行ったら、わたしの気持ちは爆発してしまうのだろう。


固く決意していたはずの気持ちが、右に左に凄まじく揺れる。


本当は、会いたかった。


ずっと。


でも、もう、会ってはいけない人なのだ。


冬が訪れる前に、健ちゃんの大切な人が日本に帰ってくるのだから。


健ちゃんも、健ちゃんだ。


もう、1ヶ月以上も連絡すらとっていなかったのに、どうして、今さら。


果江さんが帰国してくるというのに、何をしに、こんな所に来たのだろうか。


わたしは、次第にいらいらし始めていた。


幸が、少し上達した手話で話し掛けてきた。


「行かんの」




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