恋時雨~恋、ときどき、涙~
冷たくて固く尖っている、とでも言いたいのだろうか。


「すれ違ってばかりおったら、交わえるもんも、できんくなるんやで」


そんなこと、分かっている。


わたしがムッとしていると、幸は、歩道の片隅に咲いているタンポポの綿毛のように可憐に微笑んだ。


「人間の本心なんか、きいて、初めて分かるもんや。勝手に突っ走って自滅してたら、あかん」


わたしの心に重く閉ざしていた鉄の扉が、少しずつ開かれようとしていた。


「後悔してからじゃ、遅いんやで。今日を逃したら、もう、一生会えんかもしれんのやで」


それも、分かっている。


でも、わたしは唇を噛んで何も答えることができなかった。


悔しかった。


本当は、あの日、病室であんな事を伝えるつもりなんて無かった。


でも、あれはあれで、わたしにできる精一杯だったのだ。


幸の手話はまだ発展途上で、少しぎくしゃくすることがある。


でも、わたしは、その両手から目を離すことができなかった。



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