恋時雨~恋、ときどき、涙~
中島くんは鞄を机の上に置いて、わたしの目を見た。


「訊きたいことがあるんだけど、いい?」


わたしが頷くと、中島くんは無防備に微笑んだ。


「いつも、戸田さんたちが近くにいるから、なかなか声掛けづらくて」


【幸?】


メモ帳を見せると、中島くんは頭を掻いた。


白い歯がこぼれている。


「戸田さんて、男勝りで怖くてさ」


わたしは、笑ってしまった。


【いい子だよ
 すごくやさしい】


メモ帳を差し出すと、中島くんは「そっか」と笑った。


それから、心臓が飛び跳ねる事を口にした。


「長澤さんのことなんだけど」


不意打ちだった。


突然、静奈の名字を口にされた事で、わたしは戸惑った。


無論、静奈のことを忘れていたわけではない。


「もう、学校には来ないの?」


中島くんの唇を読んで、わたしは首を振った。


でも、本当は、もう来ないかもしれない、と心のどこかで思っていたのかもしれない。


わたしは、メモ帳にボールペンを走らせた。


【本当は分からない】


「どうして?」


【ずっと連絡とれないから】


メモ帳を見た中島くんは目を丸くした。


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