恋時雨~恋、ときどき、涙~
わたしはペットボトルに手を伸ばした。


お腹は空いていないのに、やけに喉が渇いていた。


砂漠のようにからからだった。


ペットボトルの緑茶を、がぶがぶ飲んだ。


砂漠を旅する放浪者のような気分だった。


お腹は全く空いていなかったけど、このままだとお母さんが心配するかもしれない。


わたしは慌ててプチトマトを口に放り込んだ。


ゼミの予習で食べる暇が無かった、そう言い訳をしよう。


お弁当箱に蓋をしながら、わたしは顔を歪めた。


すっぱい。


艶やかで真っ赤に熟れたプチトマトは、息が詰まるほどすっぱかった。


こんなにすっぱいプチトマトを口にしたのは、初めてだった。


午後の講義は全く聴く気にはなれなかった。


いや、目にする気になれなかった。


みんなが講義を受けている中、わたしはスマホの画面とにらめっこしていた。


順也からラインが入ってきた。


それは、他愛もない内容のメールだった。


それなのに、わたしは後ろ目たい気持ちでいっぱいだった。



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