恋時雨~恋、ときどき、涙~
たぶん、わたしは悪い夢を見ているのだ。


きっと、そうだ。


静奈が、幸が。


風俗で働いているなんて、誰が信じるものか。


中島くんの思い込みにすぎない。


そう思う反面、わたしの心は刺々した蕀の鎖で締め上げられていた。


どれくらいぼんやりとしていただろうか。


その時、わたしはハッと我に返った。


同じクラスの女の子たちが数人、教室に戻ってきたから。


わたしは、慌てて机の上に置かれたままのそれを、鞄に押し込んだ。


中島くんが置いて行った、風俗情報雑誌だ。


黒板の上のまるい壁時計が13時20分をさそうとしている。


次々にクラスメイトたちが教室に戻って来ると、室内の気温が一気に上昇した。


教室に戻ってきた中島くんと、不意に目が合った。


わたしは、とっさに目を反らしてうつ向いた。


机の上を見て、わたしは自分に呆れてしまった。


一切、お弁当に手をつけていない。


玉子焼き、揚げ餃子、はるさめのサラダ。


赤いタコさんウインナー、プチトマト。


全部、わたしの好きなものばかりだ。


でも、お腹と胸がいっぱいで食べれそうにない。



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