恋時雨~恋、ときどき、涙~
静奈は、わたしを冷たい目で睨んで「離してよ!」と叫んだ。


大きな口だった。


気が付くと、わたしはカーペットに尻もちをついていた。


わたしは近くに転がっていたうがい薬を、静奈に投げ付けた。


わたしは、今までたくさん悔しい思いをしてきた。


でも、この瞬間ほど悔しいと思ったことはなかった。


静奈。


大切な親友の名前を、声に出して呼び止めたいのに。


できないのが無念だった。


わたしが静奈の頬を叩いた事がきっかけになった。


ラブホテルの一室で、乱闘みたいになってしまったのだ。


静奈が、わたしの頬を叩き返してきた。


皮膚が裂かれたように痛かった。


目の奥がぐるぐる回った。


わたしは頭を振って、静奈に飛び掛かりベッドに押し倒した。


「私のこと探して、こんな様を見たかったの? どう? 満足?」


静奈は赤の他人のように、冷えた目付きをしていた。


悔しくて、勝手に涙があふれる。


わたしは、静奈の頬を叩いた。


分かって欲しかった。


本当に心配していたことを。


会いたくてたまらなかったことを。


わたしは、静奈に馬乗りになって泣いた。


< 301 / 1,091 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop